【ゼミテーマ紹介】ゲーム音楽を核とした発見型メディアの構想
概要 2025年度4年ゼミ生の須田伊織さんが,「ゲーム音楽を核とした発見型メディアの構想」というテーマでICT活用総合実習に取り組みました. 現代の音楽配信サービスでは,作曲者名やゲームタイトルといった「客観的情報」による検索が主流です.しかしゲーム音楽には,「ラストバトルの絶望感」「安らぎを感じる街のBGM」のように,プレイヤーの体験と結びついた文脈的な類似性という独自の特徴があり,既存の検索や推薦ではこれを扱うことが困難です.須田さんは,こうしたゲーム音楽特有の「主観的情報」に着目し,リスナーが自分の感情や体験を手がかりに未知の名曲を「芋づる式」に発見できるプラットフォームを構想・試作しました. テーマのポイント 課題:既存サービスの限界 Spotify や Nintendo Music などの既存サービスは,曲名・作曲者名などの客観的情報による「再認型検索」が中心 協調フィルタリングや波形解析による推薦では,ゲーム体験と結びついた「文脈的な類似性」を捉えることが困難 結果として「既知の好み」の延長線上の楽曲ばかりが提示される推薦の固定化が発生 提案:グラフ構造による感性ベースの検索 ルドミュージコロジー(Ludomusicology)の観点から,プレイヤーの能動的体験が楽曲の価値を定義するという考え方に基づき,以下のようなシステムを設計しました. グラフデータベース(Neo4j) を採用し,楽曲・作曲者・ゲームタイトルに加え,「雰囲気(Mood)」「ゲーム場面(Game Scene)」「感情的反応(Emotional Response)」などの主観的タグをノードとして連結 複数のタグを掛け合わせるAND検索や,視聴ページのタグをクリックして新たな曲を探す二段階検索で,「芋づる式」の発見体験を実現 コミュニティの Like/Dislike 評価を集約し,タグの妥当性を数値化するTag Confidence(タグ信頼度)の概念を提案 使用技術 フロントエンド:Next.js 14 バックエンド:GraphQL(Apollo Server / Apollo Client) データベース:Neo4j Aura(グラフDB) 視聴環境:YouTube Data API v3 による埋め込みプレイヤー 成果と展望 実証デモを通じて,主観的タグによる横断検索が「未知の名曲との出会い」を提供できる可能性を示しました.今後は楽曲データの拡充やタグ付与の半自動化,Tag Confidence の本格的な実装による検索精度の向上が課題です. ゲーム音楽を「波形」や「事実」としてではなく「体験」として探索できる環境をつくるという,ユニークな視点からの取り組みです.